パリ市庁舎
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パリ市庁舎
ネオ・ルネサンス様式の壮麗なシティ・ホール
パリにある最も権威の高い建物と言えば大統領官邸であるエリゼ宮かもしれませんが、観光地にある身近な建物でいえばパリ市庁舎が一番かもしれません。フランス・ルネサンス様式の壮麗な外観が美しく、パリへ行って一度は目に留まるパリ観光の中心部にあります。そういう意味では東京都庁とは違い、パリ市民や観光客にとっても親しみのある場所といえます。またパリ市庁舎には無料の展示館も併設され、定期的に写真展などの企画展示を行っています。斬新な企画はどれも質が高く、しかも入場無料というのは観光客にとっても嬉しい。パリの市庁舎はパリ市民と観光客に開かれた名所とも言えます。ロベール・ドアノーの写真でも有名
フランスの国民的写真家ロベール・ドアノー。彼の写真はパリの土産物屋さんにあるポストカードでおなじみです。その中でもとくに有名な作品が『パリ市庁舎前のキス』。彼の撮った写真のおかげでパリ市庁舎は日本でも有名になりました。一組のカップルがパリ市庁舎前の雑踏の中でキスをしている情景を撮ったもので、偶然のスナップではなくドアノーによる演出だとされていますが、偶然現れたかのような男女の恋の風景にパリへの憧れを強くした人も多いのではないでしょうか。この話には後日談があり、この写真のモデルだという女性が名乗りを上げてニュースになりましたが、真相は分からないままです。この写真は恵比寿にある写真美術館の入口で見ることができます(複製)。パリ市庁舎では2007年にロベール・ドアノーの大々的な回顧展も開かれました。
パリ市庁舎
パリ市庁舎の歴史(14世紀の始まり):エティエンヌ・マルセルと「柱の家」
パリ4区に建つ市庁舎(オテル・ドゥ・ヴィル)は、1357年に市参事会の拠点として誕生しました。ノートルダム大聖堂の参事会長を務め、市政改革を試みたエティエンヌ・マルセルの時代に、シャトレから「柱の家」と呼ばれる建物に移転したのが始まりです。以来、600年以上にわたり同じ場所に市庁舎が存在しています。市庁舎前には彼の銅像が建ち、名前を冠した通りも残されています。イタリア的だった2つの橋
パリの昔の地図によれば、パリ市庁舎からシテ島へと渡る2つの橋、ポン・オ・シャンジュ(両替橋)とポン・ノートル・ダムは、どちらも両側に家が立ち並ぶイタリア的な橋で、人の往来が絶えない活気ある場所でした。今ではなかなか想像がつきませんが、かつては橋の上に家屋がひしめく光景は日常だったようです。
パリ市庁舎の歴史(中世から近世):公の広場と処刑の舞台
市庁舎前の広場は中世以来、公開の場として大きな役割を担ってきました。娯楽の少なかった時代には、重罪人の処刑が人々を集める「見世物」となっており、絞首刑や斬首刑が行われました。ルイ16世は最終的にコンコルド広場でギロチンにかけられましたが、それ以前の時代、この広場はパリにおける刑の執行地として知られていました。ストライキのことをグレーヴという理由
1830年以前、パリ市庁舎前の広場はグレーヴ広場(Place de la Greve)と言われていました。グレーヴとは「砂」の意味で、ここがセーヌを行き来する船から荷物が引き揚げられる港(浜辺)だったことからきています。当時このグレーヴ広場に失業者が多く集まったことから、今でもストライキのことをグレーヴと呼んでいます。
パリ市庁舎の歴史(16〜18世紀):ルネサンス様式への改築と王政時代
16世紀半ば、国王フランソワ1世の命により、市庁舎はルネサンス様式に改築され、より壮麗な建築へと生まれ変わりました。その後も歴代の王の下で増築や改修が続き、17〜18世紀にはパリ市政の中心として定着しました。広場は「グレーヴ広場(Place de la Grève)」と呼ばれ、失業者が集まる場としても知られ、このことからフランス語でストライキを意味する「grève」という言葉が生まれました。パリ市庁舎の歴史(フランス革命と19世紀):政治の舞台
1789年のフランス革命では、国王ルイ16世がヴェルサイユ宮殿から市庁舎に連れて来られ、革命政府の拠点となります。19世紀に入ると1830年の七月革命や1848年の二月革命など、市庁舎は度々民衆蜂起の象徴的な場所となりました。特に1848年には臨時政府がここに置かれ、フランスの共和制樹立に直結する歴史的舞台となりました。パリ市庁舎の歴史(19世紀から現在):パリ・コミューンと再建
1871年のパリ・コミューンの際、市庁舎は火災で全焼し、多くの記録や芸術作品が失われました。しかし1882年、ネオ・ルネサンス様式で忠実に再建され、現在の姿へと受け継がれています。現在の建物は外観の壮麗さと内部の豪華な装飾で知られ、式典や展示会、市民向けのイベントが開かれる場として、市民と観光客に開かれた存在となっています。
パリ市庁舎前のスケートリンク
四季を通して市民の憩いの場になっているパリ市庁舎広場
現在のパリ市庁舎広場はきれいに整備され、噴水のあるパリ市民の憩いの場になっています。広場では定期的に自然をテーマにした様々な展示が行われています。春・夏には緑豊かな美しい庭に変身することもあり、パリのど真ん中に現れた緑に通りを歩く人の目を楽しませています。逆に冬は広場の一部がスケートリンクになり、アイススケート好きなパリっ子たちに大人気です。リンクの横にはメリーゴーランドも併設され、小さな子供たちの遊び場としても人気を集めています。クリスマスの時期になるとイエス・キリスト生誕の馬小屋を再現したクレッシュと呼ばれるテント小屋が展示され、親子が立ち止まって眺める光景が見られます。威厳のある市庁舎の前に遊び場を作るのは、人生を楽しむフランス人らしい発想ですね。パリ観光の中心地であるノートルダム大聖堂や人気のマレ地区、ポンピドゥー・センターにも近いので、観光の合間に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。- パリ観光基本情報
- パリ市庁舎 / Hôtel de Ville de Paris
- パリの観光地
- オープン(完成):1357年
- 住所:Place de l'Hôtel de Ville, 75004 Paris
- 最寄メトロ:Hôtel de Ville(オテル・ドゥ・ヴィル)
- エリア:マレ地区
- カテゴリ:パリの観光スポット
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パリ市庁舎へのアクセス(地図)
パリ市庁舎へのアクセス(地図)